著者:Yukinobu N.
編集:Syoh C.
翻訳:Dinith F

みなさんは自身の将来について考えたことはありますか。未来には、確実性と不確実性*が存在します。”確実性”とは、物事の結果や見通しがはっきりとしていて予測しやすい状態をさします。一方、”不確実性”は、将来や結果が予測しにくく、どうなるかわからない要素が含まれている状態のことです。誰しもが自分なりの”正解”を求めて、広大な海の上で航海をしていることでしょう。実は、私たちの学生生活や進路選択、人間関係にも、不確実性は身近に潜んでいて、学生が無自覚にも抱えている不安にはこれらの要素が常にまとわりつき、日々の健康状態にも大きく影響することが危惧されます。この記事では、あなたがあなたらしく大小の荒波を越えるためのヒントになれたらと思います。
・身近な不確実性について
人生にはいくつかのターニングポイントがあります。しかし、その瞬間にどの選択が未来につながるのかを完全に知ることはできません。なぜなら、人生のあらゆる場面には「不可逆性※(一度起こった出来事や選択を完全に元の状態へ戻すことができない性質)」が存在するからです。私たちは常に限られた情報の中で選択を行い、その結果と向き合いながら歩んでいかなければなりません。不可逆性=怖いもの、避けるものではなく、経験によって向き合うものであると私は考えます。
もちろん、自分自身でコントロールできる領域もあります。しかし、何をどのように制御し、不確実な未来と向き合うのかについて、義務教育の中で体系的に学ぶ機会は多くありません。だからこそ、未知の環境へ飛び込み、多様な価値観に触れ、時には自分の考えを問い直しながら行動する経験によって、私たちは生き方を学んでいくのではないでしょうか。例えば、学生生活では新しい出会いが、学業では失敗が、就職活動では選択が、そして人間関係では他者との違いが、それぞれ不確実性として現れます。
人生における一つ一つの選択は、未来の自分を形成する重要な要素になります。そのため、何を選び、何を手放すのかという取捨選択*の意識は必要です。しかし、答えが見えない状況で立ち止まるのではなく、変化を生み出すために一歩踏み出す勇気(挑戦)もまた、不確実性と向き合うために必要な力なのではないでしょうか。
・不確実性は “可能性” である
私たちは日々、予想外の出来事や思い通りに進まない状況に直面します。努力しても結果につながらない時や、想定していなかった環境の変化に戸惑うこともあります。しかし、不確実性とは単なる不安要素ではなく、新たな可能性を生み出すきっかけにもなります。心理学者のアルバート・エリス(Albert Ellis)は、論理情動行動療法(REBT*)の中で、“出来事そのものが人の感情を決めるのではなく、その出来事をどのように受け止め、解釈するかが感情や行動に影響する”と考えました。つまり、同じ出来事を経験しても、その意味づけによって、その後の行動は変化します。失敗や予想外の結果を「終わり」と捉えるのか、それとも「自分を成長させる機会」と捉えるのかによって、未来への向き合い方は大きく変わります。学生生活においても、出会いや環境の変化、価値観の違いに触れる経験は、自分自身を見つめ直すきっかけになります。不確実な状況に直面した時、ただ受け身で受け入れるのではなく、自分がどのような行動を選択する傾向があるのかを理解し、次の行動につなげることが重要です。
不確実性の中には、まだ形になっていないチャンスや可能性が存在しています。新しい出会いによって価値観が広がり、未知の経験によって自分自身の可能性に気づくこともあります。不確実性とは、未来が決まっていないからこそ、自分の行動によって変化させられる余白なのではないでしょうか。
・“正解探し”から“選んだ道を正解にする”へ
私たちは人生の選択において、つい「正しい答え」を探そうとします。後悔しない選択、失敗しない選択を求めることは自然なことです。しかし、不確実性に満ちた未来において、最初から完璧な選択肢を見つけることは容易ではありません。アルバート・エリス(Albert Ellis)は、REBTでこう解釈をしました。
「人は出来事によって悩むのではなく、出来事についての見方によって悩む」
この考え方は、同じ経験をしたとしても、その意味づけによって未来への向き合い方が変化することを示しています。つまり、選択の結果だけで自分の判断を評価するのではなく、その経験をどのように捉え、次の行動へつなげていくかが重要になります。
また、心理学者・精神科医であるヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)は、著書『夜と霧』の中でこのように述べました。
「人間からあらゆるものを奪うことができるが、最後の自由――与えられた状況に対して自分の態度を選ぶ自由だけは奪えない」
これは、環境や結果をすべて自分の思い通りにすることはできなくても、その経験をどのように受け止め、どのような行動を選ぶかは自分自身に委ねられているという考え方です。
人生において、選択した瞬間にその道の正解が決まるわけではありません。むしろ、選択後の努力や行動、そこから得た経験によって、その道に意味を与えていくことができます。不確実な未来だからこそ、私たちに必要なのは完璧な正解を探し続けることではなく、自分が選んだ道を正解へと近づけていく姿勢なのではないでしょうか。
最後に
私たちの人生には、常に予測できない出来事や選択の瞬間が存在します。不確実性とは、単なる不安や恐れではなく、新しい価値観や可能性に出会うための機会でもあります。しかし、すべての可能性を追い続けることが正解とは限りません。限られた時間の中で何かを選ぶということは、同時に何かを手放すことでもあります。諦めることは決して後ろ向きな行為ではなく、自分にとって本当に大切なものを見極め、未来へ進むための一つの選択でもあります。
フランクルは、人間にはどのような状況に置かれても、その状況に対する態度を選ぶ自由があると述べました。この言葉が示すように、私たちは未来に起こるすべてをコントロールすることはできません。しかし、その経験をどのように受け止め、どのような意味を与えるのかは、自分自身の選択に委ねられています。人生の終わりに振り返った時、大切なのは「どれだけ完璧な選択をしたか」ではなく、「自分が選んだ道にどれだけ意味を見出し、向き合うことができたか(実存*)」なのではないでしょうか。
不確実な未来だからこそ、前向きな思考を持ち、自分の可能性を簡単に諦めないこと。そして同時に、自分にとって必要なものを選び取る勇気を持つこと。それが、不確実性の中で自分らしい人生を築いていく力になるのだと思います。





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