イェゴン・ヴィンセント選手インタビュー

作者: Mika A.
編集: Trang D.
翻訳: Juri A.
原文: 英語

東京国際大学の経済学部3年生のイェゴン・ヴィンセント選手は本年正月の第97回東京箱根間往復大学駅伝競争でMVPにあたる金栗四三杯を受賞しました。この大会の2区区間新記録となる1時間5分49秒を記録し、この区間に14人もの選手を追い抜きました。またヴィンセント選手はGIONスタジアムで開催された第100回関東学生陸上競技対校選手権大会でも男子2部最優秀選手賞を勝ち取りました。以下が記録です。


10,000m 優勝
5,000m  優勝


2021年7月末、キャンパスグローバリゼーションチームは東京国際大学坂戸キャンパスでイェゴン・ヴィンセント選手に競技の経験についてインタビューをしました。ヴィンセント選手はケニアから来たTIUの学生アスリートで、日本で勉強をするという夢を叶えるため、そして、陸上の代表チームに入るべく日本に来日しました。

ヴィンセント選手は初めから今のような優秀な選手ではなく、中学生から走りに対する熱意を持ち始め、身体能力を向上するためのトレーニングに励んでいました。始めてから間も無くしてヴィンセント選手の才能が発掘され、プロとして陸上競技で勝ち抜いていけるポテンシャルがあると言われました。当初はその言葉が信じられず、自身の能力に自信が持てませんでした。陸上を単なる趣味として嗜んできた一般の人から職として走りをするプロになるのは決して簡単なことではありません。この新しい道には有無を言わせない圧力があったかもしれないですが、本校にスカウトを受けるまで、ヴィンセント選手は後戻りせず、休む間もなく1~2年間の特訓に励みました。こうして新たな人生の幕を開けました。

ヴィンセント選手は普段は80%のみの力で練習に取り組み、試合日のために残りの20%を温存します。これは練習も全力で行うべきという従来の慣例に囚われず、いささか型破りに感じると思います。しかしそれはヴィンセント選手の困憊しないための戦略でした。どのスポーツ選手でも試合日のために体力を残しておくことは大事であり、さもなくば簡単に疲れてしまいます。陸上競技はただ身体のトレーニングだけでなく、ヴィンセント選手の質の良い過酷な鍛錬と、彼自身のソフトスキル(コミュニケーション能力や協調性)が役に立っています。各競技後の忍耐力と回復力も鍛えられたものです。

次は練習中や走っている間、どのような音楽を聴くのか聞いてみました。競技中でも緊張を和らぎ落ち着かせてくれるケニア音楽を聴くことが大好きだそうです。日本という異国の地で暮らし、国際的な環境で彼は独立し、より物事に対して積極的になることができました。しかし同時に、それは母国語を話し、聞く機会がなくなるということでもあります。そのため、ケニア音楽がヴィンセント選手を最も励ますことができるのです。生まれてから使っている母国語。愛する人たちが語りかける言葉。その言語を聞くと安心感が生まれます。ヴィンセント選手は母国のケニアをとても誇りに思っていると感じました。

ヴィンセント選手は以下の思いを持って陸上競技に取り組んでいます。『優先順位を決めていて、何が重要か意識しています。走りが最優先事項です。アスリートとして走ることには限界があることを知っているので、10年、15年後には走れなくなると考えているからです。』

強い思いを持って陸上競技に取り組んでいますが、それは陸上のために学業を犠牲にするという意味では無く、ヴィンセント選手は学業とスポーツの両立を心掛けています。多忙な日々の中、彼は賢明なる時間管理を行い、必ず授業と自分を見つめ返すための時間を取っています。

最後の質問として初めて来日した時の感想を聞きました。単なる観光でなく日本に住むために訪れた多くの外国人と同様に、例を挙げれば文化や人などの全てが新しく、また怖かったと記憶を振り返りました。新たな生活に順応し、ゼロから全てを始めなくてはならなかったのは間違いなくとても難しいことであったでしょう。道は過酷でしたが、ヴィンセント選手は夢のために毎日猛特訓に励んでいます。

刺激的なインタビューの最後にはスポーツに熱意のある人へアドバイスを頂きました。『とにかく挑戦をし、自分の心の声に従うように』と。自分が進んでいる道は成功が保証されているものではありませんが、少なくとも挑戦をする勇気があったことは素晴らしいことであり、上手くいかなくても後悔したり自分を責めたりする必要はないです。