著者: Rikio Y.
編集者: Jonathan S.
翻訳: Manato I.
学期の始まりには、「毎回授業に5分前に着こう」「講義の内容はしっかりノートを取ろう」「課題は締切の前日に出そう」と意気込んでいます。しかし、5月になるとその気持ちはどこへやら。授業に遅刻し始め、ノートも取らなくなり、課題の締切も守れなくなっていきます。
このような状態を、日本では「五月病」と呼びます。新年度や新生活が始まってしばらく経った頃に感じる、軽いうつや気分の落ち込みのことです。とはいえ、このような心の不調は日本に限らず、世界中どこでも、時期を変えて訪れるものです。
冒頭で述べたように、日本の「五月病」-つまり「ゴガツビョウ」は、新生活を始めて約1か月が経ち、現実とのギャップが見え始めた頃に起こりやすい現象です。多くの人がストレスや疲労を感じる時期でもあり、そんな時に役立つのが、5月初旬にある大型連休「ゴールデンウィーク」です。日本ではこの連休を“心のリセット”の機会として活用する人も少なくありません。
フランスにも似たような現象があります。「新学期症候群(Back to School Syndrome)」、フランス語では「Syndrome de la Rentrée(ラントレ症候群)」と呼ばれ、夏の長期休暇が終わった9月に発症しやすくなります。休暇モードから日常生活に戻ることへのストレスが原因です。これに対し、フランスでは「ラ・ラントレ・カルチュレル(La Rentrée Culturelle)」という文化的な始まりの季節を楽しむことで気分を切り替える人も多いです。本や映画、コンサートといった文化活動が心の支えになります。
アメリカも例外ではありません。冬のホリデーシーズンが終わった1月、多くの人が憂鬱な気分に陥ります。その理由は、仕事復帰へのストレスや冬の出費による金銭的な不安など。アメリカでは、年始のセールで買い物を楽しむ“リテール・セラピー(小売り療法)”で気分を紛らわす人が多いそうです。
中国では、春節(旧正月)の祝いが終わった2月下旬から3月初旬にかけて、心身ともに疲労を感じる人が増えるといいます。家族の集まりや花火、パーティーなど盛りだくさんのイベントが続いた後の空虚感が原因です。中国では伝統的な漢方やお茶、鍼治療、滋養強壮のトニックなどを用いて「気(キ)」を整え、疲労を回復させる文化があります。
カナダでは「季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder / SAD)」が深刻です。11月から2月にかけての日照不足が原因で、気分が落ち込む人が多くなります。対策として、日の出を再現するアラームクロックや光療法ランプが家庭に普及しており、テクノロジーで気分の維持を図っています。
このように、「休み明けの落ち込み」は国を問わず、どこにでもある“世界共通の感覚”なのです。ただし、それぞれの国でその対処法は異なります。日本ではゴールデンウィーク、アメリカではリテール・セラピー、カナダでは光療法など、文化や社会背景に応じた方法で乗り越えているのです。
こうした落ち込みを「自分だけの問題」と思わずに、誰にでも起こりうる現象だと認識することで、自分に合ったリセット法を見つけ、前向きに毎日を進んでいけるのではないでしょうか。




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