筆者 : Theo F. and Kotomi T.
編集: Theo F. and Kotomi T.

剣道

みなさんは剣道についてどのようなイメージをもっていますか。

剣道は剣道具を着用し竹刀を用いて一対一で打突しあう運動競技種目とみられますが、稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」です。(全日本剣道連盟)かつて平安時代の中頃(794~1185)に出現した日本刀は武士が使用しており多くの戦で使われていましたが、江戸幕府開府後、剣術は人を殺める技術から武士としての人間形成を目指す「活人剣(かつにんけん)」へと昇華し、1912(大正元)年で初めて「剣道」という言葉が使われるようになります。

ここで剣道の基本的なルールをご説明します。剣道は三本勝負で勝敗が決まります。三本のうち、二本を先に先取した人の勝利です。試合の時間は5分間ですがその間に有効打突(急所《面、胴、小手、突き》)を入れられれば一本を取ることができます。

TIUには強化クラブとして剣道部があります。活動場所は川越第一キャンパス体育館2階にある道場です。現在(2024年4月時点)、24人(男子23人、女子1人)で活動しています。練習日は毎週月・水・金・土で平日は17時〜、休日は11時〜行っています。今回私たちは全国大会出場を果たした剣道部にインタビューを行いました。応えてくださったのは出水盛文総師範、寺地賢二郎師範、岡陽大主将です。それではインタビューで得られたもの、感じたことについてご紹介します。

全日本クラスになったということ

まず私たちは剣道部が39年ぶりに全国大会へ出場したことについてお話を伺いました。

岡陽大主将(4年)(以下岡主将):私は小学1年生から剣道を始め、今年で剣道歴12年となりました。剣道を始めたきっかけは父と兄が剣道をしていたからです。今までに出場を逃した先輩の悔しがる姿を見てきたので、大会に出場できたことに対してとても嬉しかったです。2022年関東学生剣道選手権大会では代表戦に出場し対戦相手と引き分けが続くも負けてしまいました。その悔しい気持ちが部員全員の「勝ちたい」という思いとなり、それが練習の糧となり絆を深め、勝利につながったと思います

2023年の全国大会出場をかけた最後の敗者復活戦でのことです。私は当時3年生でしたが先輩が二本負けてしまい、あと一本取られると出場を逃すという場面で自分の番が回ってきました。私はその時に怖さと焦りに襲われましたが、そこでめげずに粘り勝ち、全日本剣道選手権大会出場の切符を手に入れることができました。
出水盛文総師範(以下出水先生):全国大会出場について理事長をはじめ、OB・OGなど大学を挙げて喜んでくれました。本当によかった。私が東京国際大学に就任した当時は部員が5人しかいませんでした。その状況から、部員数を少しずつ増やしていき、39年ぶりの全国大会出場を果たすことができました。しかし出場するための秘策というものがあるわけではありません。歴代の部員ひとりひとりが一心不乱に剣道に取り組んで繋いだ「絆」があったからこそ、全国大会出場という目標を果たすことができました。

寺地先生による指導の様子

寺地賢二郎師範(以下寺地先生):今回の全国大会はあくまでも出場をした、ということであって、入賞、優勝というより高い目標へと繋いでいくための一つの経験だと思っています。

日々の稽古で大切にしていること

次に日々の稽古で大切にしていることをお聞きしました。

出水先生:剣道をするうえでは人間力を育てることが重要です。

一つ目は「気働き」です。気働きとは時に応じてすぐに気を利かせることですが、人だけではなく、物にもいえることです。例えば、師範と学生間の師弟関係では師範の剣道着が汚れていたら、「洗っておきます」と師範に気を働かせたり、自転車を運転しているときには曲がり角から人や物が飛び出してくるのではないか、と予測し事故を防ぐために気を働かせることです。

二つ目は「らしく」あることです。社会人らしく、東京国際大学の学生らしく、など身のふるまい方を考えて行動することが大切です。この「らしく」あることを意識して行動することにより、事件や事故の発生を防ぐことができます。

そしてこれらのような倫理教育をすることにより、人間力が高まり部内での絆がさらに深まるのです。

そして何より、聞く耳を持つことです。練習で師範から技術を教わるときに聞く耳を持たなければ上達しません。

これらは東京国際大学建学の精神にもある「公徳心」と国際人にも関わってくることです。公徳心の解釈のしかたは色々あるかもしれませんが、何事も「気」から発することで物事はいいようにも悪いようにも変容していきます。例えば我慢する気力、粘る気力などがあります。そして自分がどんな像なのか、何らしいのかを自覚することは国際社会への貢献に繋がります。このような考えを踏まえ、人間は強く、優しく、つまり強靭であるべきです。

出水先生:「ローマは一日にして成らず」という言葉があります。大きな目標を達成するためには頑張りや努力、準備が必要で、簡単には達成できないものです。

(ローマは一日にして成らず:この言葉の意味はかつて繁栄していたローマ帝国も700年もの年月を経て、ようやく完成したことをたとえとし、大事業は決して短期間では完成できないこと)

岡主将:私が入部した時は部全体としてとても仲の良い部活であったため、自身が上級生になったときは、しっかり雰囲気を引き締めつつ、仲の良さなどを引き継いでいこうと考えていました。

現在実際に主将として部をまとめていて難しいと思うことは部員ごとに目標が違っており、方向性が異なることで、違う意思を持った部員が全員納得するような練習に変えるためにひとりひとりの意見を聞いていくように努力しています。また自らそうすることで部内の仲の良さやモチベーションを保てると考えています。他大学と合同練習をした際には、一流の練習方法(例えば声だしやトレーニングなど)をまねして技術向上に努めています。

みなさんのお話を伺っていると、剣道は自身で今何をするのかを決定したり相手を思いやること(心)、試合や練習、またはほかの物事をするうえで気力(気)が必要であること、相手から得点を取るための技を鍛えること(力)はそれぞれ合わさったうえで成り立つのだと感じました。

践稽古の様子

これからの目標

出水先生、寺地先生、岡主将はこれからの目標について、全国大会出場は完全なゴールではなく、この先全国大会出場だけでなく、入賞、優勝も目標として練習に励んでいきたいと話していました。

終わりに

以上のインタビューで私たちが学んだことは大きく2つあります。

ひとつはまず、全国大会に出場することが喜ばしいことであり、「才能」で全国大会出場したということではなく、長い間全国大会から離れていたところから、日々の個人、団体練習での努力が少しずつ積み重なり仲間で絆、繋がりが生まれ、それが成果となったからこそ果たせたものであるといえます。つまりはこの全国大会に出場したということにおいて過程が重要であるということです。

次に剣道と人間形成の関係性についてです。剣道はたしかに竹刀を用い相手と勝敗をつける競技ではありますが、剣道をすることは心気力の一致をすることによって成り立っているということ、そして人間は誰しも葛藤するからこそ成長できるということを学びました。

このように剣道には深い歴史が関わっていますが、勝敗だけでなく生きていくうえで大切なことを学べるような、よい影響を与えるスポーツの一種なのだと感じました。

ぜひみなさんも目標を決めてそれに向けて努力し、極められるものを見つけてみてはどうでしょうか。

また現在、見学や入部したい人はまず川越第一キャンパス食堂3の隣にある師範室に行ってもらい見学したいと伝えるとできるそうです。興味のある方は見学に行ってみてはいかがでしょうか。

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